ロック母 角田光代

ロック母

ロック母

今までどの本にも収録されなかった「ゆうべの神様」を含めた短編集。
書かれた年代は、ばらばららしく、確かに「ゆうべの神様」なんかは、最近の作品に比べて、拙さを感じる。
だが、どの作品も、嫌な感じがうまく漂っていて、それがすごくリアルで、さすが!と思う。


表題作の「ロック母」は、未婚で妊娠した主人公が、出産のために、実家のある小さな島に帰る話。
久々に帰る実家で主人公が見たのは、母がニルヴァーナを大音量でかけながら、人形の服をひたすら縫っている姿だった。おかしくなった母と、子どもの父親に逃げられたことを言えないでいる主人公の、微妙な関係。
分娩室で流れるニルヴァーナ、最後の母の涙に、すこし泣けた。