イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

やわらかい生活 の原作ということを知り、読んでみた。
映画はもうだいぶ前に見たけど、あまりにも救われない映画でショックを受けた。見ていて痛かった覚えがある。

原作は、わりと短めで、映画とはやはりちょっと違った。映像だと考える隙を与えないからだろうか、原作のほうが温度があるような感じがする。
主人公は躁鬱病の30代独身女。元ヒモの居候、鬱持ちのヤクザ、出会い系で知り合った痴漢、EDの都議など主人公と関わる人物が、とても濃い。男たちとの付かず離れずの関係に、主人公は安心している。深くない関係というのは、癒しになるのだ。

映画は後味の悪さがいつまでも残ったが、原作の後読感は良い。というのも、ラストが違うせいかもしれないが。硬くてさっぱりした文体だけど、「ひとりになってしまった。それでも生きる」という主人公の強さを感じる。