波打ち際の蛍 島本理生

波打ち際の蛍

波打ち際の蛍

以前の恋人からのDVで心に傷を負った麻由は、カウンセリングルームで知り合った植村蛍に惹かれていく。
お互い惹かれ合ってるのは確かなのに、心と体が一致しない、近づきたくても近づけない、不安でバランスを崩していく感覚が手に取るように伝わってくる。

物足りないのは主人公と惹かれあう蛍の人物像。男性の登場人物が薄い。
ナラタージュ」でも男性陣がぼやけているように感じたし、この本だと、メインである蛍よりも、従兄のさとるのほうが断然良くみえてしまう。

この著者の本は、この作品以外もベタな恋愛小説が多い。
私はあまり「泣かせる恋愛小説」の類が好きではないし、内容のみだと綺麗事にしか感じないのだけど、文体の透明感が好きで、つい手に取ってしまう。丁寧に書いていることが伝わってくる。