戸村飯店青春100連発 瀬尾まいこ

戸村飯店青春100連発

戸村飯店青春100連発

兄弟同士の複雑な感情
この人は家族を書くと最高だと再認識した。
大阪の中華料理店に生まれた二人の兄弟。兄は、要領が良く、何でもそつなくこなしてしまうし、異性からもモテる。弟は勉強は苦手だが、野球が好きで、明るく誰からも愛されるキャラクター。弟は、何でも器用にこなしてしまう兄を好いていない。ずっと、何故だか自分の家にも馴染めないでいた兄が、理由をつけて東京に出る話から始まる。
兄弟同士のちょっとした嫉妬だったり、ライバル心がよく書かれている。こういう感情は、さほど年が離れていない同性の兄弟姉妹がいるなら、何となくわかると思う。


一緒に住んでいたころは決して仲良くなかった兄弟が、兄の東京行きをきっかけに、少しずつ変わっていく。だからといって、解り合ってすごく仲良くなるようなラストではない。お互いがお互いを少し意識していて、なんだかんだでやっぱり家族なんだと思える。

瀬尾まいこの本は『天国はまだ遠く』や『強運の持ち主』よりも、『卵の緒』『幸福な食卓』など家族を書いている作品が好きだったので、久々の家族ものは嬉しかった。