ハイドラ 金原ひとみ

ハイドラ

ハイドラ

究極の自己愛とは
摂食障害でモデルの主人公は、仕事で知り合ったカメラマンと同棲している。彼は、人間が人間らしさを失う過程を撮りたがり、主人公はそれに答えるため見えないものに束縛されている。ギリギリの状態にいる主人公の前に現れたバンドマンは、カメラマンの彼とは全く逆の人間らしいことを求め、主人公を救い出そうとする。

こういう生き方、狭く言ってしまえばこういう恋愛しかできない女子は多いと思う。カメラマンの男は、求めるようなことを一切口に出してないし、束縛もしていない。自分の身を削って、それに答えようとする主人公の行動は、彼の為ではなく結局は自己愛だ。これが自分を守る方法なのかもしれない。だから救世主に思われたバンドマンからも結局は逃げてしまう。チューニング(食べ吐き)の描写がリアルで痛々しい。


暴力的なシーンがないため、この人の作品にしては読みやすかった。金原ひとみの本は、読み終わると後味の悪さが残るのだが、何故かふと手に取ってしまう。amazonに、致死量ドーリスに酷似だというレビューがあった。そう言われればそうかもしれない。究極の自己愛と破滅。私もこの二つの作品を比べるのなら、圧倒的に致死量ドーリスだ。