真鶴 川上 弘美

真鶴

真鶴

女の匂いが強くなっていく感覚
主人公は自分の母親と娘との3人暮らし。若い恋人もいる。夫は日記に「真鶴」という言葉を残し、失踪する。主人公は「真鶴」に何度も向かう。
この大雑把なあらすじだけ聞くと、失踪した夫を探し続ける妻の話かと思ってしまう。もちろん私も、何かにこんなふうに書かれていたのを読んでそう思って手にとったのだが、この本の主人公は真鶴へ行くけど夫を探しているわけではない。まさに川上弘美の世界といった感じ。舞台が「真鶴」なのも良い。


「喪失」というものがリアルに書かれている。特に、娘が自分から離れ、日増しに女の匂いが強くなっていく部分。リアルすぎて恐くもなる。文体の繊細さはこの人ならではのもの。
センセイの鞄」や「ニシノユキヒコ〜」のようなはっきりとした物語ではなく、抽象的。「蛇を踏む」や「龍宮」と同じような色を感じた。