家日和 奥田英朗

家日和

家日和

過剰じゃないユーモアが心地良い
久しぶりに奥田英朗の本を読む。"家庭"をテーマにした短編集だ。相変わらずこの人の本は、ユーモアに溢れていて、読んでいて笑ってしまうような、でもやり過ぎた嫌味感がないのが良い。文体も余計なものがなく、シンプルでわかりやすく読みやすいのも好き。
サニーデイ」は退屈している主婦が、ネットオークションにはまってしまう話だ。自分を気にかけてくれていないと思っていた夫と子供のサプライズには、ちょっと幸せな気分になる。「ここが青山」は会社が倒産し無職になった男が主夫になる。家事も子育ても決して楽ではないけど、私は女性よりも男性のほうが凝り性でマメな人が多いと思っているので、この話には納得してしまった。「夫とカーテン」は、急にカーテン屋を起業したいと言いだした夫とイラストレーターの妻の話。外からの刺激を受けて良いものが生まれるというのは、実際本当のことなので共感した。


ところで、奥田英朗のユーモアのある作品はもちろん好きだけど、「邪魔」「最悪」など路線が違うものも好きで、もうシリアスな作品は書かないのかなと思っていたら、「オリンピックの身代金」という本が去年の11月に出ていたらしい。「邪魔」「最悪」を読んだ時は、伊良部シリーズを書いた人と同一人物なのかと疑ってしまうほど驚いた。どちらも土台がしっかりしていてぶれていないから面白かったので、久々のシリアス作品「オリンピックの身代金」は期待が大きい。