私の男 桜庭一樹

私の男

私の男

ミステリーとして読むと矛盾が多い
幼い頃に家族を失くした花と、花を娘として育てた淳悟。二人の背負っている罪が、過去をさかのぼりながら書かれている。
花と淳悟の犯した殺人を、ミステリーとして読むと、たくさんの矛盾がある。なぜ早くフィルムを現像しなかったのか、、、など。なので、その辺は気にしないようにして読み進めた。

父と娘の近親相姦というテーマの為、性描写が多い。嫌悪感を抱く人も多く、賛否両論なのは仕方がないと思う。私がこの本を最後まで読めたのは、心地良い不快感のせいかもしれない。どろどろとまとわりつく不快感だが、脆く危うい文体が良い。読後感が良いとは言えないが、先の見えない親子の愛情が苦しくてインパクトがあった。

ただ花の出生に関しては、最後まで灰色のまま。
個人的な解釈としては、花は淳悟と淳悟の母親の間に産まれた子供。つまり淳悟の実子。生まれてすぐに親戚の家に預けられ、そこで育てられる。花の家族が、花と血のつながりがないことは、なんとなく書かれている。淳悟が自分の母親に執着しているのも、それとなく触れられている。