プラナリア 山本 文緒

プラナリア (文春文庫)

プラナリア (文春文庫)

醜いものをサラッと書いてしまう
乳がんの手術をしてから何もかもが適当になってしまった主人公。親にも彼氏にもワガママを言ってしまうし、バイトも長続きしない。だからといってあからさまな同情をされるとイライラする。

病気だけじゃなくて、何かにつまづいたり、物事がうまくいかなくなった時、全て放棄してしまいたくなる気持ち。矛盾しているとわかっていても言ってしまったり、理不尽なワガママ。「自分ばかり…」と思ってしまう卑屈さ。こういうことを経験したことがある人も多いはず。女性の卑屈で嫌な部分を、サラッと書いてしまうからこの人は凄い。文体がウジウジしてないから読後感も悪くない。

短編集なので他にも作品はいくつか入っているが、「囚われ人のジレンマ」も好き。
これは大学生の男と社会人の女の結婚の話。