駈込み訴え 太宰 治
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/10/06
- メディア: 文庫
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ユダがキリストを裏切るまでの話が、ユダの視点で書かれている。
太宰の中で大好きな作品。太宰ベスト5を作れと言われたら、絶対に入る。
子供の頃に聖書を読んだ私は(正確に言うと読まされた)、ユダは裏切り者で「悪い人」と教えられてきて、そう認識していたが、これを読んで複雑な気持ちになった。
愛情と憎しみは紙一重。この言葉がしっくりくる。愛情があり慕っているからこそ、その人から何かしらの見返りが欲しくなる。辱かしめられたと感じ、裏切ってしまう。銀三十枚を受け取る時の複雑な感情。
金。世の中は金だけだ。銀三十、なんと素晴らしい。いただきましょう。私は、けちな商人です。欲しくてならぬ。はい、有難う存じます。はい、はい。申しおくれました。私の名は、商人のユダ。へっへ。イスカリオテのユダ。
ラストの、金のために裏切ったと、思い込もうと、開き直ろうとしているところが好き。